法工学実務セミナー(第10回) 「技術者のための法人間工学:事故分析と再発防止 その2」
2012年1月25日 | イノベーションセンター特別講演会主催No.11
【開 催 日】
2012年1月25日(水)17:00~19:00
【趣 旨】
安全・安心な技術社会を目指すために機械技術者は何をすべきか、各種提言がなされている。法工学専門会議は、機械技術者が法律に対して積極的な関心を持てるような企画を立案・実行すると共に、将来的には技術者が関わりを持つ法律のあり方に関して必要な提言を行うことなどを目的として、2006年4月に設置された。東北震災を背景に法工学実務セミナーは質的発展を期待されており、経験豊富な講師が技術者視点で機械技術者にとって有益な法律や技術の解説を目的としている。
【講演要旨】
東北大震災・巨大津波は2万人近い犠牲者、連動した福島第一原発事故は広範・深刻な被爆をもたらした。技術の世界に「絶対」はないのに「絶対安全」と公言したばかりに矛盾が始まり、いつの間にか推進派が集まる「原発村」が固定化し「想定外事故」で混乱、事故炉クールダウンも未収束、放射線汚染地図など情報公開も被災者補償問題も不透明と「科学技術立国」の雄姿は色褪せた。組織エラーの結末である。他方、JR東日本の旅客人身事故ゼロ、震災後の見事な節電など好事例も見逃せない。
地震大国日本は「災い転じて福となす」逆転発想で技術全般を見直し、被災地を核とし国全体を創造復興する意欲に満ちており、全技術者も加わり、近未来高確率で予想される東海・東南海・南海の三連動型地震を法律と技術の連動で防災・減災する独自モデルを世界に示せるか試されている。
科学技術は、安全で安心して使いこなせるには200年かかると言われ(畑村洋太郎氏)、約140年の鉄道技術、約130年の自動車技術、110年の航空機技術は今なお死亡事故が絶えない。しかし、何れも我々の生活に欠かせないものであり事故が起きたから直ぐ「やめようよ」とはならない。もっと安全なものをと皆が願い、進化が続く。しかし、高々60年の歴史しかない原発技術は1度の大事故被害が巨大で深刻、人間の思い通りに制御できないため、やめようと言うことになりつつある。
事故再発防止、更により安全なシステムを真剣に考える機械技術者は一体何をすべきか。事故はマン・マシン・システム運用で4M(Man人間、Machine機械、Media環境、Management管理)の調和関係破綻と解釈する。だから事故原因分析は破綻した関係特定の調査であり、再発防止は4Mの健全な再構築を意味する。当然、自動システムの人間・機械の機能分担適否も検証される。
自動車・鉄道・航空・海難事故、家庭内災害、医療事故など分析事例は多いが共通して透けて見えてくる重要な鍵は、当該システムを取り巻く社会仕組みと技術との融合性・透明性である。畑村福島原発事故調査委員会も組織エラーを軸に展望と報じられたし、JR西日本福知山線事故後の国交省公共交通ヒューマンエラー検討委員会が提案した再発防止策はPDCAサイクル導入の安全管理手順であった。
第10回法工学実務セミナーでは、事故発生過程の事実経過記録及び事故原因究明・再発防止に有効な進化する技術、車載式カメラを駆使した映像記録型ドライブレコーダーを活用した交通事故分析で自転車が第一次当事者として看過できない実態などを考える。更にローテクで顕著な安全性向上が見込めるカーブミラー微調整と交差点出会い頭事故減少との相関も見る。これらを通して法律が優先する被害者救済と技術が意図する事故再発防止との絡みを考える。
【講 師】
堀野定雄
神奈川大学工学研究所客員教授 高安心超安全交通研究所 ドライブレコーダー協議会会長、国交省自動車交通局事業用車両事故要因分析検討委員会座長
【定 員】
定員50名
(先着順に席を確保致しますので,お早めに申込下さい.)