イブニングセミナー(第128回) 「雷が逃げ出す新技術」
技術はいま,資源,環境問題をはじめ,巨大化とブラックボックス化による人間疎外の傾向に関して多くの批判にさらされている.技術が受け入れられて発展するのも,拒絶され衰微するのも,また技術者の社会的地位のあり方も,社会との深い関わりの中にあることは明らかである.われわれが新しい時代を担う責任ある技術者であろうとするならば,人間についての深い洞察を持つとともに,社会の動きを正しく見極めなければならない.技術と人間,技術と社会の関わりについて現状を理解し,将来を展望することを目的とする.
【テーマおよび講師】
【講師】石崎 誠((株)落雷抑制システムズ)
1.「避雷針」は,雷を「避ける」のか?
通常の「避雷針」の機能は,落雷を「避ける」のではなく,落雷を安全に導くことにあり,その結果として落雷被害を「避ける」という遠回しの名称である.学術的には「誘雷針」あるいは「被雷針」という名称のほうが「名は体を表す」という考えからは,より適切な名称である.昔は,避雷針をビルの屋上に取り付け,ビル内の人命さえ守れればよい時代でもあった.この時代には「避雷針」が適切な名称であったのかもしれない.
2.情報化社会で必要な落雷対策
ところが,最近は情報機器の発達によりビル内には1千台を超える規模でのPCが使用されることが当たり前の時代である.また,無線機器の発展はどこかにアンテナを必要とし,アンテナはその機能上,高い場所に取り付けることが多い.これらは,全て落雷に対し非常にデリケートである.落雷は数万アンペアの電流が一瞬にして流れ,高い電圧を誘導し,電子機器に大きな被害を与える.昔の電気機器はパワーのみを電力線に頼ってきたが,現在の電子機器の多くは電力だけでなくネットワークの線もあり,電力線と通信用の二つの線につながっている.この二つの線に電位差が発生すればその機器に電圧が発生しトラブルの原因となる.情報化社会においては人命の保護とともに情報機器の保護も必要性が高まっている.
3.どのように落雷を防ぐのか?
雷の発生パターンも色々あり,雷は一種類ではない.その中で一番多いのが,夏季雷(熱雷)と呼ばれるもので,雷雲の上層部に正電荷,底部に負電荷を蓄え,地面に誘導された正電荷との間で放電するタイプである.雷雲が近接すると,大地には正電荷が誘導され,雷雲底部の負電荷との間で放電し電流が流れる.これが落雷である.落雷を抑制するには,避雷針として容量型避雷針を建物の上に設置する.容量型避雷針の地面側の電極は大地にアースすることで容量型避雷針の対地側も正電荷となる.絶縁物を挟んだ反対側の極が上空に面した状態になる.このとき,上空側は負電荷となり,雷の底部と同じ電荷になり落雷は発生しにくい.
【懇親会】
高田馬場駅前の土風炉(とふろ)にて,講師を囲んで懇親会を行います.会費3 000円程度.