イブニングセミナー(第152回) 国道57号線のリスクを負う ―雲仙普賢岳の警戒区域解除までの5年間―
【開催日】
2012年8月29日(水)18.00~20.00
【趣 旨】
技術はいま,資源,環境問題をはじめ,巨大化とブラックボックス化による人間疎外の傾向に関して多くの批判にさらされている.技術が受け入れられて発展するのも,拒絶され衰微するのも,また技術者の社会的地位のあり方も,社会との深い関わりの中にあることは明らかである.われわれが新しい時代を担う責任ある技術者であろうとするならば,人間についての深い洞察を持つとともに,社会の動きを正しく見極めなければならない.技術と人間,技術と社会の関わりについて現状を理解し,将来を展望することを目的とする.
【テーマおよび講師】
1791年(寛政3年)雲仙普賢岳は地震と噴火を起こし,後ろの眉山の崩壊した土砂は,島原城下を通り,有明海になだれ込み,これによる津波は肥後天草に達した.この死者5千人とも言われ「島原大変肥後迷惑」という言葉を残した200年後の1991年に,雲仙普賢岳は火砕流により人命を奪うことになる.
この噴火のために,避難勧告と国道57号線も含めた退去が必要な警戒区域が設定され,この復興のための立ち入りに必要な警戒区域の解除を県が行うのは,結果として5年間を要するのだが,この期間中に国道を開けるか閉じるかは道路管理者の責任で行われる.開いている道路を危険のため閉じるのはまだ市民の納得が得られても,閉じている道路を開くのは危険が確実に去ってからといっても,自然が相手では不確定な要素が多く残り,早期開放を望む市民が納得するとは限らない.
道路管理者としては,道路利用者の安全と地域社会の復興の板挟みになる.
1991年6月に,避難勧告区域で撮影をしていた報道関係者が火砕流を浴びて死者を出し,それらの報道関係者が避難住民の空き家を無断で使ったため,出動した消防団や報道関係者に雇われたタクシー運転者も同時に犠牲となったことからも,自己責任においてとはいえない.まして,自己責任で自分の土地に戻る人ばかりではなく,観光地の復興のために観光客を呼びもどす人は,噴火により外から来た観光客に対して自己責任とは言えず,道路は開通できない.
道路閉鎖が長期間になると,「通行止め」の道路標示すら住民には敵意が見えてくる.ようやく国道57号線に接続する広い間道を造っても,今度は,NHKが,地図にない道路は存在を認められないので,たとえ通れてもTVの交通情報では「通行止め」のまま ということになったという.(Y.K)
講師:瀬戸 馨(もと建設省・長崎工事事務所所長)
【参加費】
正員 1000円(学生員 無料) 会員外 1500円(一般学生 500円)当日会場にて受け付けます.
【申込方法】「No. 12-101イブニングセミナー(第152回)申し込み」と題記し,
(1)会員資格(会員番号),(2)氏名,(3)勤務先・所属,(4)連絡先(郵便番号・住所・電話番号・E-mailアドレス)を明記の上,E-mailまたはFAXにて下記までお申し込みください.
【申込先】日本機械学会(担当職員 曽根原雅代)E-mail: sonehara@jsme.or.jp ,FAX 03-4335-7618
<懇親会> 大学近くの「バブレストラン アミ」にて,講師を囲んで懇親会を行います.
会費 3 000円程度
【次回予定】
2012年9月27日(水)18.00~20.00