基礎教育講習会 -エンジン技術の基礎と応用(その31)
2018年11月02日 | エンジンシステム部門講習会主催No.18-133
【開催日】2018年11月2日(金)
【企 画】エンジンシステム部門
【協賛(予定)】自動車技術会,石油学会,日本燃焼学会,日本マリンエンジニアリング学会,日本内燃機関連合会,日本ガスタービン学会,日本エネルギー学会
【趣旨】
内燃機関の核心から最新迄の内容を織込んだテーマ構成と致しました.地球環境面からも重要な熱効率や排出ガス関連技術に
ついて,計測の基本や最新の技術に関連させて経験豊富な講師から分かり易く解説頂きます.
特に次代を担う企業の若手技術者や学生に是非聴講頂き,内燃機関の更なる革新を目指す一助にして頂ければと企画委員一同願って
おります.
【テーマ・講師・司会】
司会:田中光太郎 茨城大学
≪午前≫
9.00‐9.05/挨拶 基礎教育講習会企画委員会 委員長 飯島 晃良(日本大学)
9.05‐10.20/(1)ディーゼルエンジンの画期的熱効率向上を実現するBreakthrough技術
〜新たな燃焼制御と熱損失低減がもたらすポテンシャル〜
近年の自動車の電動化の潮流は新たな動力源の選択肢をもたらすと共に,従来からの内燃機関に対して従来の経験則からのカイゼンに止まらない抜本的な見直しを迫っている.外燃機関から内燃機関へ,ガソリンからディーゼルへ,無過給から過給へ,これまで熱効率が飛躍的に向上した時代の背景にはパラメータの最適化を超えた大きな転換点が存在している.
将来のディーゼルエンジンの高効率化の道筋としては,熱エネルギーの確保と筒内で熱を仕事に変換する効率の向上こそが重要であるが,そのためには壁面熱損失や混合気形成といった一見自明の様で全く解っていない基本的な燃焼に関わるメカニズムの解明を経て,従来からの制約やトレードオフをBreakthroughする新技術の創出に繋げていかなくてはならない.
今回は未だ解明の途中ではあるが,(鉄製ピストンでの)壁面熱損失の低減技術,および熱効率改善に繋げる新しい熱発生率形状の制御を紹介する.
講師;(株)新エィシーイー 代表取締役常務・研究部長 内田 登
10.30‐11.45/(2) 実路走行エミッションの計測手法と予測について
近年VW社の問題などを発端として,RDE規制の整備が進められており,日本でもディーゼル乗用車を対象とする規制が整いつつある.しかし実路走行時のエミッションを把握することの本来の目的は,沿道局所における排出ガス汚染実態を解明することであり,「どこに」「どれだけの」汚染物質を「なぜ」排出したかを把握することである.
本発表では,これまで発表者が実施してきた実路走行時のエミッションの計測事例と,エミッションの排出要因を究明するために必要なエミッション以外の計測手法について紹介する.また,詳細なエンジンデータを基にして,統計的手法により排出ガスの予測式を作成し,実路走行時のエミッションを予測する手法についても紹介する.
講師;東京工業大学 工学院 システム制御系 佐藤 進
≪午後≫
12.50‐14.05/(3)自動車用量産可変圧縮比エンジンVC-Tの開発
日産自動車は,ガソリンエンジンの燃費向上を狙いとして,過給ダウンサイジング化を進めている.
一方,弊社では20年前にエンジンの知能化を目指しレシプロエンジン用の可変圧縮比機構を企画,構想し,独自の開発を続けた結果,このほど世界初の量産型可変圧縮比システムVC-Tを搭載する究極の過給ダウンサイジングエンジンとしてKR20DDTの販売を
開始した.
従来,圧縮比は固定パラメータであったため,排気量と共にエンジンの素質を決めていたが,VC-Tシステムは,車両の運転条件に
応じて圧縮比を可変制御するため,燃費を追求すべき状況では高効率な高圧縮比を選択し,加速性能が求められる状況では高過給
に適した低圧縮比を選択する.これによりエコとハイパフォーマンスという,これまで相反してきた二つの性能を一つのエンジンに
並存させることが可能になった.
ここでは,当該VC-Tシステムの解説のみならず,量産化に至るまでの技術的な工夫点についても紹介する.
講師;日産自動車(株)パワートレイン技術開発本部エンジン&トランスミッション技術開発部
第一パワートレインサブシステム開発グループ 茂木 克也
14.15‐15.30/(4)ターボ過給機の基礎とその最新技術動向について
近年の温暖化に伴い,自動車業界においてはCO2排出量規制の強化が計画されている.
欧州においては2021年に95g/kmまで規制を強化することが予定されており,その対応の一案として車両の電動化が話題となってい
るが,内燃機関の熱効率改善も継続的に取り組まれている.
内燃機関の熱効率改善に対し,ターボチャージャの適用は有効な手段であり,2005年からガソリンエンジンの直噴化とターボ化に
よるエンジンのダウンサイジングが燃費改善策のトレンドとなり,今後はそれに加え,ミラー化との組み合わせが普及していくと
考えられている.
本講演ではターボ過給機の基礎および上記内燃機関の技術開発トレンドに関連した高排温対応を特徴とするガソリンエンジン向過給
機の技術の進化と開発動向について紹介する.
講師; 三菱重工エンジン&ターボチャージャ(株)ターボ事業部 開発戦略グループ 尾崎 誠
15.40‐16.55/(5)定容容器を用いたエンジン燃焼の基礎実験・解析
火花点火機関やディーゼル機関においては,排気浄化および熱効率向上を目指して様々な燃焼方式が採用されている.
さらに燃料についても,通常のガソリン・軽油のほかに,ガス燃料,バイオ燃料,合成燃料,等の使用が模索されている.
これらエンジン燃焼における最適な運転条件や設計指針を得るためには,それぞれの燃焼過程を基礎的に実験調査し,内包する現象
を詳細に把握・解析することが必要である.
本講習会では,定容容器を用いてエンジン内非定常燃焼過程の解明を目指した基礎実験研究のいくつかを紹介する.
とくに,pre-burn方式で形成した高温高圧場におけるディーゼル噴霧の発達・自着火燃焼過程ならびにFAME噴霧,GTL噴霧および
ガス噴流の着火・燃焼特性,水素および天然ガス噴流の点火安定性,火炎伝播燃焼における壁面熱流束変化,等の研究を対象とし
て,実験の方法および得られた結果について述べる.
講師; 京都大学 エネルギー科学研究科 塩路 昌宏
16.55‐17.00/閉会挨拶
【定員】60名,申込先着順により,定員になり次第締切ります.
【教材】
講習会に参加されず教材のみご希望の方は1冊につき会員3,000円, 会員外4,000円.
教材のみを入手ご希望の方はhttps://www2.jsme.or.jp/fw/index.php?action=kousyu_indexよりお申込み下さい.