第21回トワイライトセミナー 宇宙開発設備の信頼性を向上させるリスクベースメンテナンスの導入(東京)
【趣旨】
当部門は機械学会の中でも,とりわけ横断的色彩が濃い部門である.対象は,建設機械,農業機械,食品(加工)機械など,多くの産業機械関連分野,そして,化学装置,化学プラント等,化学品製造に関わる化学機械関連分野である.当部門はこの特長を生かし,多種多様な関連産業に共通する課題を見いだし,情報の共有化,情報の発信をしていくことを使命と考えている.その一つとして「安全」を取り上げている.
また,関連する機械が多種多様であることから,社会で実務経験を有する技術者も多彩であることを示している.今日のように複雑化した機械技術においては,各技術者が専門とする技術のみでは解決できない場合も多々あると考える.複数の技術の融合により,より高度な技術に発展していく可能性がある.そのためには,情報収集と懇談の場を提供する必要があると考えて,本企画を計画した.今後も定期的に開催していく予定である.
【講演要旨】
宇宙航空研究開発機構(以下「JAXA」)では,ロケットの打ち上げに用いるプラント並に大規模・複雑な射場設備を有している.更に振動試験を行う小規模な試験設備からロケットエンジン燃焼試験を行う大規模な試験設備まで様々な試験設備に加えて,発電所,受変電設備といった一般的な施設・設備なども数多く使っている.それらの設備に対して,JAXAでは従来から法定点検に加えて試験や打上げを確実に実行するための自主点検を合わせて毎年の設備保全を実行してきたが,最近では老朽化の影響で保全後に不具合を持ち越す傾向が減少しない.この運用へ持ち越す不具合を減少させ設備の信頼性を向上させる目的でリスクベースメンテナンス(以下「RBM」)を導入すべく,その有効性と実現性 を検証する調査・研究を平成19年度から実行している.
本講演では宇宙開発設備の現状と保全へリスクに基づく考え方を導入する調査・研究に至った経緯を述べ,ロケット射点の高圧ガス貯蔵供給設備及び大樹航空宇宙実験場電波送受信設備を対象に定性的/定量的リスク評価を試行した内容と成果及び今後の課題を概説する.
【講師】
関田隆一 宇宙航空研究開発機構 安全・信頼性推進部