一般社団法人 The Japan Society of Mechanical Engineers

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日本機械学会連続講座「法と経済で読み解く技術のリスクと安全~社会はあなたの新技術を受け入れるか~」第2期・第4回 講演 森永ヒ素粉乳中毒事件における専門職の責任と課題

2014年10月24日 | 法工学専門会議特別講演会

【開催日】
2014年10月24日(金)17.30~19.30

【第2期・第4回 講師】
中島 貴子 (国際基督教大学非常勤講師)

【第2期・第4回講演趣旨】
日本社会が戦後の復興期を脱し,高度経済成長期に移行する矢先の1955年8月24日,岡山大学医学部小児科教授は日本中を震撼させる食中毒事件を公表した.「森永ヒ素ミルク中毒事件」として知られる前代未聞の大型化学性食中毒事件である.
ここでいう「ミルク」とは,今日,我々がその語感から連想する液状の牛乳ではなく,粉状の「乳児用調整粉乳」である.ここに酪農後進国,日本の乳業界がたどった特異な歴史の一端を垣間見ることができるが,乳製品の物価統制が解除され,乳業界が自由競争時代に入った1950年以降,乳児用調整粉乳は日本の乳業界全体の成長を牽引する最重要品目であった.ところが,乳児用調整粉乳の製造技術の導入と開発において圧倒的優位にあった森永乳業(株)の新製品(ビタドライ)に,ヒ素化合物が混入するという想定外の事故が森永乳業徳島工場で発生した.その結果,ヒ素粉乳を飲用した乳幼児100人以上が死亡し,1万人以上が中毒症状を呈する大惨事となった.
以上のような事故概要と被害規模もさることながら,事件が公表された後の展開も注目に値する.ヒ素粉乳飲用児の後遺症に関する医学的判断と,森永乳業の刑事責任に関する司法判断という,いずれも専門的な公的判断が,相当年限を経て真逆になるという逆転劇が起こったのである.
すなわち,1956年3月から12月にかけて厚生省が実施した全国一斉精密検査の結果,「ない」とされた後遺症は,1973年,日本小児科学会と日本公衆衛生学会がそれぞれ「ある」と認めた.原審(1963年10月25日徳島地裁)において全面的に「無罪」とされた森永の刑事責任は,差戻し後一審(1973年11月28日徳島地裁)において,徳島工場製造課長の「有罪」が確定した.こうした公的判断の逆転を追い風として,被害者の恒久救済機関が1974年4月,森永乳業の全面出資により発足した.これも同時期の公害事件には例のない,本事件固有の展開であった.
本セミナーでは,森永ヒ素粉中毒事件の事件史(1950年~1974年)の概略を紹介しつつ,①国際的には後進分野の技術領域とはいえ,国内的には最先端の新製品の製造工程で,なぜ重大事故が発生したのか,②事後対応において,専門的な公的判断はなぜ逆転したのか,という二つの問いを,エンジニア,医師,法曹など専門職の責任と課題という観点から考察する.

【本連続講座の開催主旨】
福島第一原子力発電所の事故は技術の安全性に対する人々の信頼を失わせた.しかし,技術なしに現代社会は成り立たない.また,介護ロボットのような新技術は私たちの生活の質を向上させることが期待される.一方で,技術にはリスクがつきまとう.介護ロボットの誤作動で被介護者が死傷することもあり得る.社会に利益をもたらすとともに,リスクを内包する技術はどのような条件の下で社会に受け入れられるのだろうか.リスクが現実化したとき,技術者の責任は問われるのだろうか.今,新技術の開発に従事する技術者の胸に去来するこのような疑問に,現在の法制度のみならず,法と経済学,正義論なども視野に入れて,体系的に答えようという野心的な試みからこの講座は生まれた.技術のリスクと安全に関心のあるすべての技術者に是非聴講していただきたい.

会場
日本機械学会 会議室(東京都新宿区信濃町35 信濃町煉瓦館5階)
参加登録費

無料

申し込み先

【新規申込方法】
日本機械学会連続講座参加申し込みと題記のうえ,(1)氏名,(2)会員・非会員(会員の場合会員資格・会員番号),(3)学校又は勤務先,(4)連絡先(電話番号,e-mailアドレス)を明記の上,下記申込先までE-mail又はFAXにてお申し込みください.なお,一度申し込みを受付し登録をされた方は,それ以降の講座に継続的に出席出来ますので,毎回申し込みをする必要はありません.

問い合わせ先

【問合せ・申込先】
日本機械学会事業企画グループ 担当 荒木弘尊
電話(03)5360-3506/FAX(03)5360-3508/E-mail: nedoproj-lt@jsme.or.jp

関連サイト
http://www.jsme.or.jp/InnovationCenter/nedoproj-lt/

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