日本機械学会連続講座 「法と経済で読み解く技術のリスクと安全~社会はあなたの新技術を受け入れるか~」 第3期・第5回 講演: 航空機事故とヒューマンエラー
【開催日】
2015年11月20日(金)17.30~19.30
【第3期・第5回 講師】
垣本 由紀子 (日本ヒューマンファクター研究所 安全人間工学担当顧問 兼 安全人間工学研究室長)
近藤 惠嗣(福田・近藤法律事務所 弁護士)
【第3期・第5回講演趣旨】
民間航空事故の発生頻度は,他の公共交通機関に比べ極めて少ない.最近10年の平均発生件数は,すべての機種を含めて17件.小型機とヘリコプターが約30%,大型機と超軽量動力機が約10%,滑空機15%,その他である.原因別では,操縦者が関わったヒューマンエラーが最も高く,全体で70%から80%である.ここでは,ヒューマンエラーの中のコミュニケーション齟齬に焦点を当て,発生の機序等について考察する.
【本連続講座の開催主旨】
福島第一原子力発電所の事故は技術の安全性に対する人々の信頼を失わせた.しかし,技術なしに現代社会は成り立たない.また,介護ロボットのような新技術は私たちの生活の質を向上させることが期待される.一方で,技術にはリスクがつきまとう.介護ロボットの誤作動で被介護者が死傷することもあり得る.社会に利益をもたらすとともに,リスクを内包する技術はどのような条件の下で社会に受け入れられるのだろうか.リスクが現実化したとき,技術者の責任は問われるのだろうか.今,新技術の開発に従事する技術者の胸に去来するこのような疑問に,現在の法制度のみならず,法と経済学,正義論なども視野に入れて,体系的に答えようという野心的な試みからこの講座は生まれた.技術のリスクと安全に関心のあるすべての技術者に是非聴講していただきたい.