イブニングセミナー(第133回) 「生物は何処まで機械か―生命科学の最先端と生気論最後の砦―」
【開催日】
2010年11月24日(水)18.00~20.00
【趣旨】
技術はいま,資源,環境問題をはじめ,巨大化とブラックボックス化による人間疎外の傾向に関して多くの批判にさらされている.技術が受け入れられて発展するのも,拒絶され衰微するのも,また技術者の社会的地位のあり方も,社会との深い関わりの中にあることは明らかである.われわれが新しい時代を担う責任ある技術者であろうとするならば,人間についての深い洞察を持つとともに,社会の動きを正しく見極めなければならない.技術と人間,技術と社会の関わりについて現状を理解し,将来を展望することを目的とする.
【テーマおよび講師】
「生命(いのち)とは何か?」,「生物の定義は?」古くて新しい問いである.
生命(現象)に関しては,古代ギリシャ時代から「生気論」と「機械論」という二つの概念の対立があった.
19世紀にルイ・パスツールによる自然発生説の否定以来,生命科学の発展は生命現象も化学反応によって説明でき,20世紀半ばに始まった分子生物学の発展は生物・生命の仕組みも分子レベルでの説明を可能にした.1970年代に始まった所謂ニューバイオテクノロジーは,遺伝子組換え技術,細胞融合技術,クローン動物作成技術など生物を機械のように思いのままに操作することを可能にした.
そして2000年にはヒトの全ゲノム解読が終わり,ついに人類はヒトの設計図を手にしたと言われた.その後もES細胞やiPS細胞の発見利用により,人体の部品である臓器の再生への道も見えて来た.更に,今年になって米国の研究機関は「人工細菌」の作成に成功したと発表した.生命科学の発展と共に追い込まれて来た「生気論」も終に消え去ったのであろうか.
「生命(いのち)の世紀」と言われる21世紀に生きている我々は,クローン人間,デザイナーズベイビー,GMO,脳死の問題,臓器移植,再生医療など身近な問題として生命(いのち)とは何かを自問自答しながら生きることを否応なく強いられている.
生命科学の最先端を覗きながら,改めて「生命(いのち)とは何か?」を考えてみたい.
講師:才園哲人(科学随筆家)
【懇親会】
高田馬場駅前の土風炉(とふろ)にて,講師を囲んで懇親会を行います.会費3 000円程度.
【次回予定】
2010年12月22日(水)18.00~20.00
演題未定