第36回バイオサロン
2011年1月07日 | バイオエンジニアリング部門特別講演会主催No.10
【題 目】
メタボリックシンドロームの病態生理と治療戦略
【講 師】
熊本大学大学院生命科学研究部・医学系 成育再建・移植医学講座
分子遺伝学分野 尾池雄一 先生
【内 容】
本邦は、65歳以上の人口が約4人に1人という超高齢化時代への突入が迫っており、社会が『健康長寿』を真剣に考えないといけない状況にある。近年、生活習慣の多様化に伴い、運動不足や肥満の増加が我々にとって深刻な問題となっている。また、運動不足や肥満に起因し生体内に生じる“慢性炎症”が、『健康長寿』を妨げるメタボリックシンドローム、糖尿病、動脈硬化性疾患など様々な疾患の基盤病態となることが注目を集めている。慢性炎症では、感染や外傷に対する生体防御反応である急性炎症と異なり、長期にわたるストレス応答のために実質細胞と多
種の細胞から構成される間質細胞との相互作用が遷延化し、生体適応の過剰応答や変調等の破綻により組織リモデリングを生じて、臓器の機能不全をもたらす。例えば、肥満に伴う内臓脂肪組織内の慢性炎症が、糖代謝異常、脂質代謝異常、血圧異常が一個体に集積するメタボリックシンドロームの病態形成に深く寄与することや、血管組織内や血管周囲の脂肪組織の慢性炎症が、血管内皮機能異常、動脈硬化の形成過程や動脈硬化プラークの不安定化
に深く寄与することが明らかとなってきている。このことは、メタボリックシンドロームや動脈硬化性疾患等の“慢性炎症”を基盤病態とする生活習慣病において、鍵となる分子を同定することが病態の分子メカニズムを解明し、新規治療戦略を考えるうえで重要であることを示唆している。本講演では、最近我々が同定した“慢性炎症”の鍵因子の1つであるアンジオポエチン様因子2(Angptl2)と生活習慣病発症・進展との関連、さらに新規治療法開発の可能性をAngptl2の観点からご紹介したいと思います。
【司 会】
山口大学大学院医学系研究科 斉藤俊
【定 員】
40名