一般社団法人 The Japan Society of Mechanical Engineers

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RC268

1. 分科会名称 『歯車装置に対する設計・製造及び評価に関する革新的技術探究の調査研究分科会』
2. 主査名 森川 邦彦 (日産自動車)
3. 設置期間 2015年4月~2017年3月(2年間)
4. 活動目的・内容 機械産業は間違いなく経済的に日本を支えているが,すでに技術は完成し,先端技術でもうやることはないとの誤った認識から,技術の維持・向上の手は抜かれ,人的投資もなされていないのが実情である.
中でも歯車は,機械装置の主要な構成要素であるにもかかわらず,その傾向が強く,大学での歯車研究は大幅に減っており,企業においても歯車技術者の数が年々減ってきている.また,新興国の台頭からグローバルな競争に曝され,コスト削減の圧力は益々高まってきている.単にコスト競争ということであれば,新興国でも最新の加工機を導入すれば,安価な労働力と相まって競争力のある歯車装置が生み出されてしまう.我が国の歯車装置が国際競争に打ち勝っていくためには,コスト低減要求に応えると共に,高い信頼性を維持したまま軽量コンパクトを実現し,低騒音・低振動あるいは低動力損失といった運転性能を世界トップレベルに維持して差別化を図っていくことが重要となる.
これまでの研究分科会でも,この観点から設計法や評価・解析方法等について整理し,ノイズや効率と言ったかみ合い性能の改善に対する技術課題を調査研究すると共に超高強度化に向けての技術課題の解決方法について調査研究を実施してまとめてきたが,完全に解決できているわけではない.これは,研究課題が技術のスパイラルアップに起因し,そのスパイラルの進展により新たな研究課題が顕在化してくることにも因る.また,評価・解析方法についてもこの新たな研究課題に対応させていかなければならない.
さらに,技術の蓄積に対して,若い人的資源が十分に供給されず,技術を吸収しきれていないという問題も存在する.
そこで,本分科会では技術の現状についてグローバルにベンチマークしつつ,新たに調査研究した技術情報をタイムリーに提供して,共有することに大きな目的を置き,革新的技術探究と題して継続性を維持しつつ活動を行うこととする.このため,以下の調査研究を実施すると同時に,若手技術者に向けて技術情報交流の場を提供する.
① 歯車負荷状態を模擬した接触・回転曲げ疲労試験機(CBF試験機)の開発(継続研究)
・新しい試験方法の有用性,有効性の確認と世界への提案
② 世界トップレベルの歯車装置であるための設計・製造及び評価技術の調査研究
・ハード面,ソフト面のグローバルベンチマーク
・設計,評価・解析技術革新のためのブレークスルー技術の明確化
・解析ツールの汎用化
・最新技術情報の収集と分析
③ RC分科会活動の中長期ビジョン検討
・RC分科会活動の継続性維持のための中長期ビジョンの策定
また,年に4回の全体分科会(内1回は見学会を予定)を開催し,上記の情報展開をすると同時に,最新の技術に関する話題提供と議論を行い,また特に若手技術者間の技術交流の場を提供して,オールジャパンの技術力と活力の向上に資する.
また,新しい試みとして,大学,高専で歯車装置に関連する研究に取り組んでいる教員あるいは学生の方々の全体分科会へのオブザーバ参加を認め,日本の歯車技術者,研究者の底上げにつなげていきたいと考えている.これにより,若手研究者の学会活動に対する興味が高まることも期待できる.
5. 期待される研究成果 RC251分科会において,高強度歯車に特化した新たな強度評価法である接触・曲げ疲労試験(Contact Bending Fatigue Test)を提案して,RC261に継続して強度評価法の新展開を目指した研究を実施している.この方法は,歯車の歯には曲げ応力と強い歯面接触応力の両方が生じるという特殊性に基づいて提案された.RC251で試作1号機によりその試験方法を実現し,RC261では1号機で明らかになった問題点を改良した2号機を設計し,製作した.本分科会ではこの2号機を用いて,その有効性と有用性を確認する.この試験機を用いた材料評価から,精度の高い超高強度歯車の設計指針の構築が期待できる.
また,RC261では,歯車装置の振動・騒音や動力損失等のかみ合い性能に関しても,その評価・解析技術や性能向上技術について,何ができて何ができないかを整理し,一部は研究を実施することにより,現状技術の位置づけの明確化を進めてきた.本分科会ではそれを継続し,それぞれの分野における技術をグローバルにベンチマークして,以前の分科会(RC156) で作成した日本が生み出す歯車装置が世界トップレベルであるためのターゲットモデルを更新して,その達成のためのブレークスルー技術を明らかにする.この2年間の活動を通じて,これらブレークスルー技術を解くための,設計・製造及び評価・解析に関する最新の革新技術を提案することを目指す.
6. 参加負担金 25万円(年間)×2年
7. 問合せ先 森川 邦彦 日産自動車(株),シニアリサーチエンジニア
(主査)  TEL: 050-2029-0012, FAX: 046-290-0854,

e-mail: kun-morikawa@mail.nissan.co.jp

住所: 〒243-0123 厚木市森の里青山1-1