一般社団法人 The Japan Society of Mechanical Engineers

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No.162 学会,デザイン,オープンイノベーション,レーザ

2017年度(第95期)企画理事
石出 孝[三菱重工業(株)執行役員フェロー]


表題は,私が今やっている仕事を記載したもので,学会に関しては規模が3段階に異なる学会(会員が35000,3500,300名程度の3種類の学会)に参加しています。どの学会でも言われているのは,学会員の減少で,これが共通の話題です。そこで,表題に記載している各々の仕事の面から学会をながめた話をしようかと考えました。

まずは,デザインですが,私のところにはあのMRJをデザインしたデザイナーも居り,通常の機械学会の会員の皆様の感覚とは少し異なる人種が集っています。服装も自由で,作業空間も通常の研究室とは異なります。アドバンストデザイン,コンセプトデザインはもとより,トップクリエータを訪問し,社会基盤と人の関わり方の未来を模索しています。その混沌とした議論から将来,人の感性はどうなってゆくか,またその価値観の変化はどうなってゆくかを考え,そこから将来必要な技術は何かを導き出そうとしています。その結果求められるデザインはこうなるのだろうという準備をしてゆくデザイン版のPictures of the Future(Siemensの長期戦略の呼び名)を考えている訳です。このような取組みはGE等でも成されており,メガトレンド分析に基づく将来戦略を見据えて,今の活動をどうしてゆくかを考える良い機会になるものと思います。これはどのような組織にでも必要なことで,学会でも,Pictures of the Futureを考える機会が必要だろうと思います。将来こうなるために今どう変わってゆくべきかを考える機会があることは重要かと思います。

次にオープンイノベーション(OI)ですが,私はOIには以下の3点を期待しています。一つ目は,現状の開発のスピードアップを行うための研究。二つ目は,本当のイノベーションを起こす1割に満たないだろう研究,三つ目は,世の中が変わってしまう研究 です。後半の二つは,なかなか実を結ばない研究ですが,これを許す風潮があまり日本,特に企業にはありません。ここは是非学会が中心となったアカデミアに期待したいところです。しかし,実を申しますとこの後半の二つを考えている,あるいは実践している研究者がいてもそれを正しく見つけ出す目利きが居ないのも事実です。このような目利きを生み出すには,グローバルな環境で切磋琢磨され,世界で自分達の研究のポジショニングがしっかりできるような人材が育成される必要があります。このような人材育成ができる環境を造りだすには困難を伴います。しかし,これがアカデミアサイドにも求められていることではないでしょうか? アカデミアの成すべきことは,国が金を出す研究,企業が金を出す研究ではなく,それ以外の人類に必要な研究を成す事だという話を吉川先生に聞いたことがあります。それは,企業から見ても大切で理想ですが,是非実践できる人材が日本に育つことを期待します。

最後にレーザですが,これは私の技術分野の専門がレーザ加工だから取り上げました。私がレーザ分野で期待しているのは,やはり最新の生きた情報です。通常論文になった情報というのはすでに古いものでその開始は,2~5年前です。論文になる以前の生きた情報が得られることを学会には期待しています。昔のようにネットが発達していない時代は学会に行けば,何等かの情報が得られました。しかし,昨今では外の情報は自由に得ることができます。また,それら情報をもとに直接研究機関を訪問したり,そのメンバと議論したりすることができます。私も隔月くらいのペースで世界の研究者と会っていますので,その点では別に学会に参加しなくとも,十分な情報が得られる訳です。そこで我々が学会に期待することは,このような発表が許されている情報ではなく,学会での議論の場で ああやはり,その方向を目指しているのだな ということが分かることかと思います。すなわち目に見えぬ最新情報を提供してくれるのが,今の学会の大きな役目かなと考えている訳です。

ついでにもうひとつ場違いな話をします。私はレーザを見てきましたので思うことですが,最近TV放映された映画で「バトルシップ」というハワイ沖で日米のイージス艦が合同演習をしている際に宇宙人が攻めてくるという,たわいもない(しかし男の子には面白い)映画があります。この内容はさておいて,宇宙船から発射される複数の飛昇体のようなものをバルカン砲で撃つ場面があります。通常のバルカン砲では30秒程度で銃弾が無くなる上,複数を一度に撃ち落とすのはなかなか難しいのです。もしここにレーザ砲が使われたら,攻撃による誘発もなく,電源が死なない限り打ち続けることができるのです。今年既に米国,ドイツのイージス艦にレーザ砲が配備されたのは皆さんもYouTubeでご存知かと思います。ここまで話すと何を言いたいの? とお思いでしょうが,安全を得るために,是非アカデミアの英知を使うべきだと言いたいのです。これは最後の付け足しです。

以上各方面から学会に期待していることをまとめると 学会にも戦略を考える部門が存在し,メガトレンドから学会の進むべき方向を模索してゆく必要があるというのが一つ目。二つ目は,学会は目利きを含めたグローバル人材を育ててくれる場所にならないか という期待。三つ目は,やはり最新の目に見えない情報を提供してくれる場所。この三つを期待するとともに,今後なんとか機械学会でこのような活動ができないものかと考えてゆくつもりです。

以上