一般社団法人 The Japan Society of Mechanical Engineers

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No.173 ’18夏過ぎて思うこと
2018年度企画理事 岩城 智香子[東芝エネルギーシステムズ(株)主幹]

JSME談話室「き・か・い」は、気軽な話題を集めて提供するコラム欄です。本会理事が交代で一年間を通して執筆します。


2018年度(第96期)企画理事
岩城 智香子[東芝エネルギーシステムズ(株)主幹]


平成最後の夏は記録的猛暑となった。多くの集中豪雨にも見舞われた。地球温暖化の影響とみられるこれら異常気象を経験し、温室効果ガス削減につながるエネルギーシステムの選択について、改めて考えさせられた。加えて、北海道で起こったブラックアウトは、大規模集中型の電力システムの脆弱性を思い知らされることとなった。今後、脱炭素とエネルギー安定供給を両立する社会実現に向けて、エネルギーシステムの多様性や柔軟性が一層求められることは疑問の余地がない。現代生活はエネルギーなくして成り立たず、エネルギーの将来像を一人ひとりが考えることが求められる。しかし、問題は効率、コスト、安全性、環境負荷などを決定する科学・技術的な観点にとどまらず、社会的リスク、他国含めた政治・経済まで広範囲に及ぶ。これらを俯瞰的に見、総合的に判断することは難しい。とりわけ一般消費者にとって、エネルギーについて学び考えることは容易ではない。

ここで、筆者も会員であるWEN(Women’s Energy Network)(1)の活動を紹介したい。この団体の特徴は、中立公正な立場で、専門家と一般市民とのエネルギーコミュニケータを務めることにある。活動はエネルギーに関する意識調査や、廃棄物・放射線などの小冊子作成など多岐に及ぶが、最も重要視しているのは一般市民との情報交換・交流である。その一つとして、大学の学祭の場をお借りし、毎年開催しているオープンスクールがある。展示内容は毎年テーマに応じて変えるが、1999年来、改良を重ねつつも変わらず実施しているのがエネルギーアンケートである。将来期待する電源二つをその理由とともに選択し、シート上にシールを貼るという方式だ。参考情報として用意した、エネルギー密度、発電コスト等の公開データも活用し、双方向の対話を経て回答してもらう。時には、「技術イノベーション」「技術の世界貢献」「地域・世代間公平性」などにまで話題は及び、複数の視点から知識を総動員して答えを探り、結論を見出されていることがうかがわれる。中には毎年参加されるリピータもいて、情勢変化に応じて考えを変えられることもある。こうした活動を通して痛感するのは、エネルギーのような、多岐の分野を包含し種々の状況変化に影響される問題に対しては、継続的に知識を拡充・更新して学び続け、総合的に評価する力を養っていくことが重要ということ、そしてそれには、情報交換と交流の場が有効ということである。

さて、エネルギー工学は明らかに「総合工学」に位置づけられる。日本学術会議の総合工学委員会が発出した提言(2)では、総合工学の役割を、「これまで別々の分野として発展してきた学際・複合的な分野を包含し、さらに環境問題など工学全体、科学技術さらに社会全体に跨る課題をも対象としており、広い分野間の学問の連携・融合を促すことにより、新しい領域の創成や社会で求められる技術、価値あるいは概念を作り出す」こととしている。また、「総合工学の主な役割の一つは『知の統合』を具現化することである。」ともある。一方、機械工学について提言では、「個別のディシプリンに基づく基盤工学の学問領域」としている。しかしながら、近年、多様化するニーズとAIやIoTの導入などで複雑化する機械システムは、「総合工学」の領域にも踏み込みつつあるのではなかろうか。

現在、機械学会ではまさに、「社会的課題に立ち向かう学会」を目指し、部門や集会事業企画の在り方が議論されている。各分野の基礎的知識と最新情報が獲得できること、また他分野の情報収集と研究者・技術者交流ができることが機械学会の特徴である。その特徴がより活かせる学会とすべく、筆者も残された半年、企画理事として努力したいと同時に、一技術者としても積極的に活動していきたいと思う。


参考文献:
(1)ウイメンズ・エナジー・ネットワーク(WEN)HP, http://www.wennet.jp/
(2)提言「社会的課題に立ち向かう『総合工学』の強化推進」、日本学術会議 総合工学委員会(2017年9月6日)