一般社団法人 The Japan Society of Mechanical Engineers

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No.193 海外渡航色々
2020年度財務理事 餝 雅英[川崎重工業(株) ]

JSME談話室「き・か・い」は、気軽な話題を集めて提供するコラム欄です。本会理事が交代で一年間を通して執筆します。



2020年度(第98期)財務理事

餝 雅英[川崎重工業(株) ]


この記事の上部には「気軽な話題を集めて提供するコラム欄です」と記載されております様に、肩の凝らない話題として昨年度出張で訪れた(これまで一度も訪れたことが無い!)国々の印象について書かせて頂きたいと思います。

まず、昨年の10月には第14回動力エネルギー国際会議(ICOPE-2019)に参加するため開催地の中国 昆明市を訪れました。昆明市は中国の南西部の雲南省に位置し、ベトナムとの国境に近い都市ですが比較的標高が高い(1891m)土地なので冬は温暖で夏も涼しく、中国で最も快適な気候にある都市とされ古来、春城の異称を持つ都市で、少数民族が多く住む都市であることも知られています。

自宅の最寄空港である関西国際空港から昆明へは直行便はありませんので、往きは杭州経由、帰りは北京経由で昆明長水国際空港を使い往復をしましたが、2012年に開港した昆明長水国際空港は中国でも有数の国際空港で、規模も大きく空港設備も整っている近代的な空港でした。

この空港から会場まではタクシーで30分ほど高速道路を使用して移動しましたが、都市の中心部が近づいてくると見えてくる高層ビルが立ち並ぶ近代的な街並み(ユニクロもあるようです。)と、道路上に設置されている監視用カメラの多さが印象的でした。

動力エネルギー国際会議は中国、アメリカ、日本の機械学会が共同で開催していますが、今回は中国での開催ということで参加者の大多数は中国の方々でしたが、エネルギーに関する幅広い発表が行われ、新しい知見を得ることが出来きました。

学会の会場は湖に隣接するホテル内にあり、その近くに「登竜門」の由来となったと言われている「龍門」(図1)があるのを知り講演の合間に訪れてきましたが、「龍門」の入口までに乗ったロープウェイに搭乗する際にも自動的にカメラで顔写真(監視用?)が撮影されており、「龍門」の入口のゲートはチケットのQRコードを読み込むと入場できるシステムが採用されており、日本よりIT化が進んでいる印象を受けました。

また、今年の2月中旬には北欧3か国(ノルウェー、スウェーデン、フィンランド)の航空産業の調査のため現地の企業を訪問しました。出発前は2月の北欧を訪問するということで、万全の防寒対策をしていきましたが、今年の北欧の冬のシーズンは記録的な暖冬で、街中でも積雪がほとんどない状態で北海道の冬の気温と比較してもほとんど変わらないか暖かいぐらいのコンディションでした。

ノルウェー、スウェーデン、フィンランドとも国土の面積は日本とほぼ同じぐらいで、最も人口の多いスウェーデンの人口が約1000万人、ノルウェー、フィンランドは人口が約500万人と、東京都の人口(約1400万人)より人口が少ないですが、3か国とも昨年の一人当たりのGDPは日本を上回っていますし、工業製品(SAAB, VOLVO, WÄRTSILÄ)、IT製品(NOKIA, Spotify )など、世界でも有数な企業があります。また、今回訪問させて頂いた航空産業の企業についても、それぞれ特色のある製品を開発、製造し独自の存在感を示しています。この様に、少ない人口でも世界で競争力のある製品を提供し続ける点は、日本の企業にとっても大いに参考になるのではないかと思いました。(工業製品以外にも、北欧風の優れたデザインの家具、食器、服なども日本で人気となっていますが・・・)

スウェーデンの首都であるストックホルムではノーベル賞晩餐会の会場となるストックホルム市庁舎を訪れる機会があり、ノーベル賞を受賞された方々が一同に会し食事をする会場「青の間(ブルーホール)」(図2)を見て感慨深いものがありました。(残念ながら今年は新型コロナ感染拡大防止のため晩餐会が中止となりましたが・・・)

この訪問の際、スウェーデンの国自体がバルト楯状地と呼ばれる岩盤の上にあり、建物を建てる際にはこの岩盤を削る必要があるのでノーベルにより発明されたダイナマイトが有効に使われたとの説明があり、国の自然環境の違いにより必要とされる技術が異なり、それに応じて技術発展の分野、スピードなどが異なることに直に接することが出来ました。(スウェーデンの地下鉄工事は岩盤を掘削するため大変だったようです。)

この2月の北欧訪問の後に新型コロナウィルスの世界的な感染拡大(パンデミック)が始まり、様々な国への渡航が禁止されている状況になってしまいました。企業の生産活動や技術開発を行う上でも海外との交流が必要不可欠ですが、現状は極力人の移動は行わずオンラインでの打合しか行えなくなり、学会活動においても国際会議のほとんどがオンライン開催となり、新しい日常「ニューノーマル」が広がっている状態となってしまいました。

しかし、やはり現地を訪れ直接人と会うことにより得られる情報には代えることはできませんので、一日も早く以前のように自由に色々な国を訪れることが出来る状態に戻るためにワクチンや治療薬の実用化は勿論のこと、検査や治療に関する機械製品等の開発に機械工学が少しでも役立てることが出来ればと思います。

取り留めのない文章になってしまいましたが、最後に医療関係者をはじめ社会生活を継続するために働いていただいている世界中のエッセンシャルワーカーの方々に感謝の意を表し終わりとさせて頂きます。

 図1 龍門  

図2 青の間