一般社団法人 The Japan Society of Mechanical Engineers

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第80期会長就任のご挨拶

-第二世紀へ向けての諸改革を実りあるものへ-

伊東 誼 [東京工業大学名誉教授]
Yoshimi ITO


会員の皆様のご推挙により第80期の会長に就任することになりました伊東でございます。100年以上に亘り、高度な資質と自律性を有する専門家の集団として多種多様な活動を展開し、我が国の機械工学、技術、工業、並びに関連する分野へ多大の貢献を行ってきました日本機械学会の会長を務めさせて頂くことは大変に名誉なことと考えております。又、最近の諸般の事情は、我が国で最も大きな学会として、日本機械学会に工学・工業分野のみならず社会への寄与を大きく期待しており、従来の一学会内に留まらない活動も求められています。会長としての責務の重さをひしひしと感じておりますが、その一方、会員の皆様の御支援、又、筆頭副会長、副会長、理事、並びに事務局職員の御協力を得て日本機械学会が更なる発展を遂げるべく、微力ながら尽力させて頂く所存でございます。
ところで、第80期では、筆頭副会長制が採用されてから2年が過ぎ、学会の第二世紀に際して策定した諸施策を実りあるものへと昇華させることが望まれています。諸施策については、第79期小林敏雄会長の「会長就任のご挨拶」にて紹介され、又、その現状は別途添付された資料にまとめてあります。一言で、策定された諸施策は予定通り順調に進められていて、その状況と学会活動は「時空連続体」的であるべしを勘案すると、第80期では第79期の重点活動目標を引続き堅持するとともに、それらの深化を図るのが望ましいと考えられます。すなわち、「期待される学会の姿及び魅力とは」、「如何なる会員サービスが必要か」、「望まれる会員のボランティア活動とは」等の大命題は常に念頭に置きながら、当面のところは「研究開発推進センター」と「工学教育センター」が新規事業創出に大きく貢献するように、完全な形で創設することを始めとして、グローバル化時代に相応しい、例えばバーチャル海外支部の開設のような、国際協力、交流体制の整備、社会に開かれた学会をアッピールする広報・情報部会の活動強化を活動の一つの柱として行きたいと考えています。特に、工学教育センターにつきましては、会員サービスの面も含めて、又、機械系の幹事学会として技術者教育認定機構への更なる協力体制、又、技術者継続教育プログラムの強化・整備を進めます。
その一方、筆頭副会長制を積極的に活かすものとして、1年間の慣熟期間に企画を進めた次の二つを軌道に乗せるべく所要の活動を推進したいと存じます。

(1)国際的規模で若手会員の人的・技術資源ネットワーク構築を支援する「Real & Virtual閃き道場」の開設。第80期では、少なくともアジア地域内で一つを試行したいと計画中です。
(2)学会所有の知的資源の積極的な利用による情報発信。79期に実現しました、研究論文の実務面での利用価値を高める「耳より情報」を更に高度化し、「技術指針集」や「設計資料集」の出版、並びに学会出版物のあり方、例えば出版物の質の見直しや電子出版への取り組み。

以上のほかに、2030年には、工業先進国では全人口の25%が65歳以上になると予測されていること、すなわち、21世紀のグローバル化・高度情報化・高齢化社会へ如何に適応するかという日本機械学会の長期的な戦略の策定も行うべきかと考えております。
最後に一言触れさせて頂きたいのは、日本機械学会の第二世紀へ向かっての取り組みは、最近の米国機械学会や(英国)電気学会の諸改革と比較してもなんら遜色はなく、逆に先行している「自己革新策」もかなり含まれている点です。例えば、(英国)電気学会では、「President’s Strategy Working Party」を創設していますが、これは「政策・財務部会」と同じ発想です。しかし、昔から「腹がへっては戦はできない」と云われるように、日本機械学会には、「良い企画ではあるが、それを具体化する資金面が十分でない」という「財政の不安定さ」があり、この面では今後とも改善努力が必要ですので、ご支援の程を宜しくお願い致します。


(2002年4月8日 通常総会あいさつより)