パブリックコメント募集「倫理規定改定案」に関する意⾒公募
2025/05/16 |お知らせ
本会理事会では技術倫理委員会(佐藤国仁委員長(2024年度))からの提案を受け、1999年に制定された倫理規定の改定を検討しております。倫理規定は入会の際に遵守することを同意頂く必要のあるもので、定款や細則と並んで全ての会員の皆様に関わる重要な規定であることから、改定に先立って意見を公募することとなりました。つきましては本ページに記載されている提案の趣旨と、改定案(現行規定との対照表)をご覧頂き、回答フォームよりご意見をお寄せくださいますようお願い申し上げます。
●ご意見回答フォーム(受付期間:2025年5月16日~6月15日)
https://forms.office.com/r/ztNV9saivh
※いただいたご意⾒につきましては、⽒名・所属とともに公表される場合がありますので、ご承知おき下さい。
●提案の趣旨
本会の初代倫理規定が1999年に制定されてから今年で26年となる。制定当時の状況を振り返ると担当者個人のレベルの事故や失敗が頻発していた。それゆえ専門職たる技術者、研究者こそが事故の倫理的責務を認識して行動するべきだとの問題意識が多くの学協会に広く共有され、本会もはじめての倫理規定を制定した。それから四半世紀が経ったいま、倫理的な課題は一人の技術者、一つの組織が担えない規模の問題へと拡大している。
本会の倫理規定条文はすべて“会員は・・・する”と定めている。会員個人の責務を社会に宣言することが当時の学会の役割と認識されたからだった。だがいまや、倫理的な判断を行おうとしても、個々の技術者にはそのために必要な技術状況の全体的な理解すら困難な時代となっている。専門家の集団である本会も、会員とともに社会における機械工学の倫理的課題に積極的に取り組むことが求められている。
技術倫理委員会はこの変化を次の2つの問題に集約した。
その一つは、会員個人が倫理的行動を心がけるだけでは、現在まで多く発生してきた組織による不祥事に対して有効ではなかったことである。組織による不祥事に対しては、これまでの倫理規定や倫理教育が前提としてきた個人レベルの行動では十分ではなく、学会としての行動が求められる。
二つ目は、科学技術の進歩が加速する中で、会員個人では判断が難しい技術的問題が益々多く発生するようになると予想されることである。生成AI が持つ可能性と問題はその典型例の一つと言える。このように、倫理的課題はますます複雑化し、一人の技術者だけで対応するのは困難な状況が広がっている。
しかしこれらの問題についてその解決方策の具体的な提言、さらに解決のための行動を学会自身が主体的に引き受けることは現時点では困難と言わねばならない。以上の問題意識および可能な行動の限度を認識したうえで、会員が認識する倫理的課題に関して議論の場を設定し倫理的な行動をサポートする環境作りを学会が積極的に進めるとの宣言を組み込むことを提案する。なお、今回の改訂は必要最小限に留めている。学会が倫理教育を推進することとあわせて、こののちの倫理規定の抜本的改定に向けて、学会が主体となり議論を進めるプロセスを実施することが求められる。
●倫理規定(現行/改訂案(朱記))
| 現行 | 改訂案 |
| 前文
本会会員は,真理の探究と技術の革新に挑戦し,新しい価値を創造することによって,文明と文化の発展および人類の安全,健康,福祉に貢献することを使命とする.また,科学技術が地球環境と人類社会に重大な影響を与えることを認識し,技術専門職として職務を遂行するにあたって,自らの良心と良識に従う自律ある行動が,科学技術の発展と人類の福祉にとって不可欠であることを自覚し,社会からの信頼と尊敬を得るために,以下に定める倫理綱領を遵守することを誓う. |
前文
日本機械学会は,学術と技術の発展を通じて持続可能な社会の実現と人類の福祉に貢献することを使命とし,機械工学・機械技術の進歩を通して豊かな社会の形成と人々の幸福に寄与してきた.科学技術は地球環境や人類社会に重大な影響を及ぼしており,機械工学・機械技術に携わる者には社会の一員として倫理的行動が常に求められる.本会は,会員の倫理的行動を希求し,また,組織や制度の問題や新しい科学技術がもたらしうる問題を常に考慮しながら,個々の技術者では対応が難しい倫理的課題にも取り組む.日本機械学会は,機械工学・機械技術に関わる倫理的課題へ積極的に取り組むことをここに宣言し,倫理綱領を定める. |
| 1 技術者としての社会的責任
会員は,技術者としての専門職が,技術的能力と良識に対する社会の信頼と負託の上に成り立つことを認識し,社会が真に必要とする技術の実用化と研究に努めると共に,製品,技術および知的生産物に関して,その品質,信頼性,安全性,および環境保全に対する責任を有する.また,職務遂行においては常に公衆の安全,健康,福祉を最優先させる. |
(現行通り) |
| 2 技術専門職としての研鑽と向上
会員は,技術専門職上の能力と人格の向上に継続的に努める.自らの専門知識を,豊かな持続的社会の実現に最大限に活用し,公衆,雇用者,顧客に対して誠実に対応することを通じて,技術専門職としての品位,信頼および尊敬を維持向上させることに努める. |
(現行通り) |
| 3 公正な活動
会員は,立案,計画,申請,実施,報告などの過程において,真実に基づき,公正であることを重視し,誠実に行動する.研究・調査データの記録保存や厳正な取扱いを徹底し,ねつ造,改ざん,盗用などの不正行為をなさず,加担しない.また科学技術に関わる問題に対して,特定の権威・組織・利益によらない中立的・客観的な立場から討議し,責任をもって結論を導き,実行する. |
(現行通り) |
| 4 法令の遵守
会員は,職務の遂行に際して,社会規範,法令および関係規則を遵守する. |
(現行通り) |
| 5 契約の遵守
会員は,専門職務上の雇用者または依頼者の受託者,あるいは代理人として契約を遵守し,職務上知りえた情報の機密保持の義務を負う. |
(現行通り) |
| 6 情報の公開
会員は,関与する計画と事業が人類社会や環境に及ぼす影響を予測評価する努力を怠らず,公衆の安全,健康,福祉を損なう,または環境を破壊する可能性がある場合には,中立性,客観性を保ち,自己の良心と信念に従って情報を公開する. |
(現行通り) |
| 7 利益相反の回避
会員は,自らの職務において,雇用者や依頼者との利益相反を生むことを回避し,利益相反がある場合には,説明責任と公明性を重視して,雇用者や依頼者に対し利益相反についての情報をすべて開示する. |
(現行通り) |
| 8 公平性の確保
会員は,人種,性,年齢,地位,所属,思想・宗教などによって個人を差別せず,個人の人権と人格を尊重する.また,個人の自由を尊重し,公平に対応する. |
(現行通り) |
| 9 専門職相互の協力と尊重
会員は,他者と互いの能力の向上に向けて協力し,専門職上の批判には謙虚に耳を傾け,不公正な競争を避けて真摯な態度で討論すると共に,他者の知的成果などの業績を正当に評価し,知的財産権を侵害せず,非公開情報の不正入手や不正使用を行わない.また,複数の関係者によって成果を創出した場合には,貢献した者の寄与と成果を尊重する. |
(現行通り) |
| 10 研究対象,研究協力者などの保護
会員は,研究対象を含む研究協力者の人権,人格を尊重し,安全,福利,個人情報の保護等に配慮する.動物などに対しては,苦痛への配慮や生態系への影響を考慮し真摯な態度で扱う. |
(現行通り) |
| 11 職務環境の整備
会員は,不正行為を防止する公正なる環境の整備・維持も重要な責務であることを自覚し,技術者コミュニティおよび自らの所属組織の職務・研究環境を改善する取り組みに積極的に参加する. |
(現行通り) |
| 12 教育と啓発
会員は,自己の専門知識と経験を生かして,将来を担う技術者・研究者の指導・育成に努める.また得られた知的成果を,解説,講演,書籍などを通じて公開に努め,人々の啓発活動に貢献する. |
(現行通り) |
| (新規追加)
13 学会の役割 本会は,専門的な学術および技術に関する団体としての社会的責任を自覚し,倫理的な行動を普及し促進し支持する.組織や制度の問題,新しい倫理的問題など,個人では対応が難しい問題に対しては,議論の場を持つ,意見を発信するなど,内外への働きかけに努める.また会員が倫理的に発言し行動しやすい環境づくりに配慮する. |
●本件に関するお問合せ先
総務グループ 大竹
TEL:050-3506-8509
E-mail:otake@jsme.or.jp